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ベルラド放射能安全研究所7
Filed under 未分類12月 5ベラルーシから来た放射能対策の専門家に、次々と発せられる日本人記者(なかには中国人記者もいた)からの質問は、どの書物から情報を得たのかが透けて見えるくらいに急ごしらえのものでありながら、その背後にある心情は、広範囲にわたって汚染され被曝をしてしまった日本が、いったいこれからどうなっていくのかを等しく教えてもらいたがっているものだったと思う。あの科学者はああ言っているけれどほんとうなのか、この書物にはこう書かれているけれどそのとおりになるのか。答えのない疑問で頭がいっぱいになっている。
日本という国が経験したことのない前代未聞の出来事が招き寄せる不安は、子どもとともに福島で暮らさなくてはならない母親たちばかりではなく、大本営発表をなぞるような記事を流しつづけたことで、国民をミスリーディングしたと批判されている当の新聞記者たち、一般市民とくらべるなら豊富な情報回路を持っているはずの彼らにも、共有されているようである。 福島を訪問したECRRのクリス・バズビー博士が、高濃度に汚染されている地域で遊ぶ子どもたちというショッキングな風景に遭遇して、そこに悪夢のようなパラレルワールド(平行世界)を見たように、おそらくいまの私たちは、あれほど大きかった原発事故でも大したことはなかった(ように見える)日常性を、かつてのように生きている私たちと、放射性物質の拡散によって一変してしまった世界に、なすすべもなくたたずんでいる私たちと、ふたつの世界に分裂して生きる自分を見ているのではないかと思われる。福島にとどまって郷土の復興に力を尽くしている姿と、この土地を脱出して新たな生活を再建している姿と、一種の股裂き状態のなかで、自我を分裂させているように思われる。
そのどちらにも私たちがいる、そんな精神の逢う魔が時を漂っているとでもいったらいいだろうか。ポスト・チェルノブイリの世界を生きのびてきたベラルーシ人の眼に、日本の現状や、そのようにとらえどころのない私たちの姿が、いったいどう映っているのかを、眼を凝らして見ようとしているのである。
そうなのだ。放射性物質が雪のように山河に降り積もり、道路のうえを霧のように漂っては、風とともにサッシ窓から吹きこんでくるような世界を、想像力で構築することなしに、私たちは自分がいまどんな世界にいるかを知ることができないのだ。そうした世界を見ることができているのは、いまのところ、放射能イマジネーションの訓練をすでに受けている科学者たちや、市民運動家たちだけであるように思われる。 ──チェルノブイリの移住ゾーンほどの汚染がある日本の地域から移住せずにこのままいたら、私たちにどのような影響があるか。またウクライナやベラルーシの平均寿命が原発事故のあとで短くなったというのは本当か。 ウラジーミル・バベンコ:チェルノブイリ原発事故が起きたあと、あと10万人くらいの人が移住しなくてはならなかったのですが、ベラルーシの経済状況がとても悪かったために、移住することができませんでした。日本の経済状況はベラルーシなどよりはるかにいいと思います。なにがしかの対策をうつことが必ずできるでしょう。
危険と思われる地域から人々を避難させ除染をする。あるいは人が住まなくてもいいような工業地域にしてしまう。
そのような対策を何年かつづけたあとで、その場所にまた人が戻ってくるというような方法もあるのではないかと思います。かつてベラルーシの汚染された森林地帯を除染するプロジェクトを立てたことがあります。
ベルラド研究所と林業研究所との共同事業として、100ヘクタールの森林地帯を除染しようと林業研究所にもちかけたのですが、彼らは100ヘクタールと聞いて気が狂ったのかと言いました。現在の日本において第一にしなくてはならないのは、土壌の測定です。土壌をまず測定してください。測定して汚染状況がわかれば、これからどうしたらいいのか、対策方法がおのずから見えてくると思います。 日本の人口密度は高いので、汚染地域に住んでいる人も当然多くなってきます。そうした条件を考えると、自分たちの故郷を捨てて、他の避難場所に全員が移ってしまうようなことはしないほうがいいと思います。自分たちが住んでいた土地にできるだけ住みつづけること、この方向でなんらかの対策を立てることを考えてみるのが、絶対にいいと思います。原発事故があり、ベラルーシで平均寿命が短くなってしまったのは事実です。
死亡率が出生率をうわまっているような状態が、いまもつづいています。
特に高濃度の汚染地帯として有名なベラルーシのゴメリ地区で、そのような状況がつづいています。 ──ベルラド研究所が調べたことのなかで、放射性物質が人体に与える影響にはどんなものがあるのか。 ウラジーミル・バベンコ:研究所は医療機関とも協力関係にあり、いっしょに測定をしたことがあります。研究所は子どもの体内にある放射性物質の量を測定し、医療機関は心電図を取るということをしました。その結果わかったことは、子どもの年齢に関係なく、体重1kgあたり70ベクレル以上だった子どもは、高血圧の傾向が見られました。子どものころから血圧が高ければ、それが心臓に悪い影響を与えることは明らかですよね。その後いろいろな方法を使って、その子どもの体内に蓄積されたセシウムの量を減少させると、血圧も下がるという研究結果が出ました。そんなことがあります。
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